…先月よりの続き…
さて、先月のジャズ編では、アナログレコ-ドの圧勝に終わった。
今月はクラシックで、CDとレコ-ドの比較をしてみよう。
それでは第2ラウンド、はじめ!
か-ん。
聴き比べたのは、次の2タイトルである。
①ラヴェル「ク-プランの墓」(クリュイタンス指揮・1962年録音)
②ラヴェル&ドビッシ-「弦楽四重奏曲」(パレナン弦楽四重奏団・1969年録音)
わたしは拍子がぬけた。
結論から言うと、ほとんど聞き分けがつかなかった。
大雑把に言ってしまえば、CD、レコ-ドとも同じ音である。
ジャズ編の時のような、
CD化に際するおかしな音処理は施されていないようである。
なぁんだ、あんた。CDもやればできるじゃないの。
と、わたしは安堵のため息をもらした。
②の「弦楽四重奏曲」では、
演奏者が足を動かす音が床を伝わってマイクに拾われている。
ノイズといえばノイズであるが、
この音などもCDにそのまま収められていて、逆に好感が持てた。
どうやらクラシック系のエンジニアのほうが、
「ピュアな音」を大切にしているようすである。
しかしよく聴きこんでゆくと、
やはりCDでは高域の伸びが今一歩足りないような気もする。
CDでは、テ-プヒスがすこし小さくなっているような印象もうけた。
ひょっとしたらテ-プヒスを取り除くための
何だかの処置が施されている可能性もある。
その手のノイズリダクションをかますと、高域はすこし落ちる。
あたりまえだのクラッカ-である。
だがこれに関してはなんとも言えない。
レコ-ドの場合、トレ-スノイズ(針が音溝を擦る音)が加わるので
それがテ-プヒスのように聞こえているのかもしれない。
トレ-スノイズがないCDのほうが、
細かい演奏のディティ-ルはよく聴き取ることができる。
特に音が小さくなる部分が多いクラシックでは、
圧倒的にCDが有利である。
アナログレコ-ドでは、ピアニシモの部分がトレ-スノイズに埋没してしまう。
さらに盤質が悪いと、
いつ飛び込んでくるかわからないプチノイズに戦々恐々となって、
曲を楽しむどころではなくなってしまうことがある。
よって今月の勝負は、(別にムリに勝負をつけることもないのだが)
CDの判定勝ちとしよう。
ところで、
CDでは20KHz以上の音はカットされている。
これはなぜかというと、
20KHz以上の高周波が「聞こえる」人はほとんどいないからである。
聞こえない音を入れてもしょうがないだろう、
ということだ。
(ちなみに、犬や猫などの動物には、この高周波は聞こえるらしい。
こうもりなどは暗闇の中で、自ら高周波を発し、
その反射音をたよりに耳で飛行しているそうである。)
ところがこの高周波、
聞こえなくても「気配」として「感じる」ことができる、という説がある。
この「聞こえない」高周波をたくさん聞く(浴びる?)と、
α波が増幅するという研究結果を、どこかで読んだことがある。
α波は、人がリラックスした時に出てくる脳波である。
鳥のさえずり、波の音、風の音など、
自然界には20KHz以上の音があふれている。
ガムランなどの民俗音楽では、強烈な高周波を生み出すことで
聴衆をトランス状態にまで導くのだという。
CDではこの部分の音が、バッサリ切られている。
アナログレコ-ドには一応、
この「聞こえない高周波」が収録されている、ということになっている。
がしかし、これについても実は疑問がある。
確かに、秒速76㎝で回る1インチのテ-プレコ-ダ-なら、
かなりの高周波まで収録できたと思う。
だがそれ以前に、20KHz以上の音を拾えるマイクがほとんどない。
仮にレコ-ドに20KHz以上の音が入っていたとしても、
我が家のエコノミック・オ-ディオシステムには、
スペック上、20KHz以上を再生できるピックアップやモニタ-がない。
なのにこれが我が家のアナログレコ-ドから
「聞こえている」ような気がするのはなぜなのか?
CDと比べると、違いがわかるのはなぜなのか?
単なる「気のせい」の類いだろうか?
アナログレコ-ドを愛するがあまり、
いつに間にか「親バカ」のようなことになってしまっているのだろうか?
それとも、ちゃんとした理由があるのか?
これがわからない。
そんな折、アナログレコ-ドを聴いていて
わたしはふと、あることを思いついた。
わたしはアンプのボリュ-ムをゼロにした。
耳をすますと、針がレコ-ド盤をひっかく、かすかな音が聞こえている。
電線を通っていない、アナログレコ-ドの生の音である。
蚊の鳴くような音とは、これのことである。
しかし、もしや、まさか!
この音は20KHz以上を再生してはいまいか!
…次号へ続く…
2009 8月
「対決!アナログレコ-ド VS CD」(クラシック編)