長年使用してきた「アルカディアくにたちスタジオ」は、
老朽化のため取り壊しとなった。
どれくらい老朽化していたかというと、
写真は
これ
である。
あははは…。
よくぞこんなところに17年間も住んでいたものである。
取り壊しの下見に来た業者のおじさんも「うっ、すごいね~」と、
含み笑いを噛み殺しているような有様であった。
ボロいので有名だったザ・バンドの「ビックピンク」や、
トッド・ラングレンの「ユ-トピアスタジオ」よりも
おそらくはるかにボロかったに違いない。
世界一ボロいレコーディングスタジオとして、世界遺産に登録しておけばよかった。
なにしろ月1回、バキュームカーが汲み取りに来るんだから…。
ということで、4月のはじめに引越しをした。
引越しといっても、歩いて10分くらいの所である。
我ながらびっくりしたのは、荷物の多さであった。
荷作りだけで、約1ヶ月を要した。
引越しを手伝ってくれた魔術師の
マジっクRin
も、
荷物を見るとさすがに顔面蒼白となっていた。
ギター類が13本。コンガ、ボンゴなどの生楽器。レコーディング機材にPA。
モニタースピ-カーが5組。パソコン関連の機器。
そして極めつけは1000枚近いアナログレコード。
レコード以外は、ほとんどがここ10年くらいの間に買いためたものである。
これらのひとつひとつが、
すべてお年寄りのオムツ替えなどで稼いだ金で買った物なのだと思うと、
目頭が熱くなった。
新しいスタジオは
「スタジオひまわり」
と命名した。
いくぶんか広くなって、音の響きも上々である。
もちろんバキュームカーなどは来ない。
家賃はだいぶ高くなったが、まあ引っ越して良かったのではないだろうか。
ところが!
ここでとんでもない事件が勃発した。
引っ越して一週間を経過した頃から、部屋がなんとなく臭くなってきたのである。
最初は「おれもついに加齢臭がしてきてしまったのか…」と、
お風呂で身体をごしごし洗っていたのだが、どうやらそうではないらしい。
エアコンがにおっているような気もしてきて、
フィルターを引っ張り出したりしてみたが、これでもないようだ。
しかし、においは日に日に強くなってくる。
つぎに疑ったのはパソコンである。
引越しの前、パソコンの内部を見たら凄まじい埃であった。
分解して掃除はしたのだが、においは取れていないのかもしれなかった。
どこか焦げ臭くも感じる。
もう7年近く使っているので、冷却ファンが焼き切れる寸前なんだろうか?
そろそろ買い替えたほうがよいのだろうか?
などと、あれやこれやと調べているうち、ついににおいの発生源が判明した。
それはパソコンではなかった。
メインで使っているタンノイのモニタースピ-カーの左側だ。
これのバスレフポ-トからものすごい悪臭が漂っている。
わたしはタンノイのスピ-カーを台所へ運んだ。
そしてスピ-カーユニットを恐る恐る箱からはずして中を覗き込んだ。
ギョエ~~~っ!
わたしはスピ-カーを放り出し、いったん部屋の外へと緊急避難した。
な、なんと、スピ-カー内部の吸音ワタのなかにミッキーマウスくんの死体。
そこからうじむしくんがわいていた。
つまりこういうことだ。
前の家でこのスピ-カーを荷作りした後、
しばらく押入れの中にしまっておいたのである。
その間にねずみがバスレフポ-トからスピ-カーの内部に侵入し、
吸音ワタをベッドにしていたらしい。
ところが出られなくなって死んでしまったのだ。
それをそのまま連れてきたのである。
写真は
これ
。
いやいや…。
さすがにウジがわいているねずみの死体の写真を撮っている余裕はなかった。
ビニール袋に何重にも縛って即ゴミ箱へ。
まさに、バイオハザード!である。
いまこれを書いている時点でも、
スピ-カーの箱
にこびりついたにおいは取れていない。
ファブリーズなどいくらふりかけてもきかないので、
より強力な消臭剤を通販で取寄せているところである。
いやぁ、生きているといろんなことがあるなぁ、まったく…。
その晩はじつに寝つきが悪かった。
他のスピ-カーの中にも
きっと何かがひそんでいるような気がしてきて、
鼻をくんくんさせつづけていたのである。
2010 5月
「引っ越しについて来たのは…天使?」