井形大作のニュ-アルバム完成である。

タイトルは「みなもと」

曲は最近つくったものから、大昔につくったものまで
とり混ざっているのだが、
とくに「今」の時点で記録しておきたかったものを丹精込めて、
まるで鶴が自分の羽を抜いてはた織りしているようにして(なんやそれ)
録音したのである。(お涙チョ-ダイか)
だからレコ-ディング中はけっしてふすまをあけないで…

CDの内容は聴いてもらえばわかるので、
ここではすこし、レコ-ディングのテクニカルな面について、
(ややマニアックな話になるが)書いてみよう。

実は前作のCD「ひとひごと」から、
レコ-ディングの手順を変えている。

以前は、まずリズムトラックを
KORG Triton Le のシーケンサ-でつくり、
YAMAHA AW-2816 と同期させた上で、
そこにギターや歌を一つ一つ重ねてゆく方法であった。

前作「ひとひごと」からは
まずドンカマ(リズムトラック)なしの
ギタ-弾き語り1発録りをべーシックトラックとしている。
そこへすべて手弾きで音を重ねているのである。

このやり方だと、べーシックトラックになる弾き語り部分については、
修正やゴマカシがまったくきかない。
歌やギターを一ヶ所ミスったからといって、
そこだけ後で差し替える、といったことができないのである。

よって、この最初の部分の録音で、納得できるものが録れるまで
かなりの時間がかかる。

たとえば同じ曲を1日10回、弾き語って録音してみる。
これを5日間続けると、50テイクが録れる。
そのなかで技術的にミスをしていないものや、
へんな演奏上のノイズが入っていないものが、
よくて5テイクくらい録れる。
そのなかから一番よいものを選んでいる。
よいものがなければ、もう一度やりなおしである。

この最初のプロセスをサボると、
後でいくら音を重ねたところで納得できるものはできない。
べーシックトラックの弱点をごまかすためのアレンジに陥って、結局
「ボツ!」
となってしまうのである。

そんな重労働を仕事でもないのに、なんの報酬もないのに、
日夜こつこつとスタジオにこもってやっているのである。

これはもうヲタクどころか、奇人変人と言われてもいたしかたがない。
「49歳にもなって、おまえだいじょうぶか!」
の世界である。

というか、逆にこれがもし仕事であったなら、
アホらしくてやっていられないんじゃなかろうか?
「別にやらなくてもいいこと」
だからこそ、できるのかもしれん。
こんなことが
「やらなくてはならないこと」であったなら…
と考えただけでゾッとするのである。
昔のマジメなミュージシャンはみんなここで行き詰まり、
ジャブ中となって地獄へと散っていきおったのだ。
(…だいぶ大げさな話になってきた)

このところはもっぱら、
弾き語りは
Taylor NS52-CE を使っているのだが、
今回は 
Valley arts custom pro が活躍した。
このストラトは透明感のある独特な音がする。
どの曲でどのギタ-を使っているのか、
CDのスリーブに写真入りで載せたので、
そのあたりも楽しんでもらえたらと思う。

CD「みなもと」
時価1000円です。
よろしく!


                               

2011 7月
   「みなもと」