…先月よりの続き…

このシリーズ最終回を飾るのは、いよいよロック対決である。
期待と不安で胸が躍るではないか。
では最終ラウンドだぁ~!
かーん。

CDとアナログレコ-ド、比較したのはこの2タイトル。

◎ドゥービー・ブラザーズ  「ドゥービー・ストリート」(1976年録音)
◎スティーリーダン    「エイジャ」(1977年録音)


まずはドゥービ-だが…。
何だろう、このCDは。
高域が落ちて、ほとんど「音がこもっている」といってもよい状態である。
カセットテープでダビングしたような音。
なんでこうなるの…。
また返品必至のCDがでてきちゃったよ。

ところがスティーリーダンの「エイジャ」。
CDでは高域の落ち込みはまるでなく、
アナログ盤とほとんど聴き分けがつかない、いい音である。
むしろCDのほうが高域の歪み感がなく、
スティ-ブ・ガッドのハイハットが実に心地よい。

うーん。

わたしは困惑のうなり声をあげた。

こうなってくると、
「アナログだから音が良い」
とか
「CDだから音が悪い」
とかいう問題ではないような気がしてきた。

どうやら、CD化する際の、何らかの技術的な要因によって
音の良し悪しが決まっているようなのだ。

だが結局、
ここまではアナログ盤を明らかに上回る、音のよいCDというのはなかった。
だからやはり総合的な結論としてはこの対決、
アナログレコードのほうに軍配が上がってしまうのだろうか…。
と思っていたところ、

アナログ盤より音のよいCDを発見した。

◎フランク・ザッパ  「スタジオタン」(1974~1976年録音)

但し、このCDはリマスタ-である。
…1991・Digital EQ…
と明記されている。

このCDは、高域がどう、低域がどう、とか言う以前に、
音そのものが活き活きと飛び跳ねている。
アナログ盤が海賊盤かと思ってしまうほどである。

いったい、どうなっているんだろうか?
何度もプレ-ヤ-にかけているので、
レコ-ドが磨り減ってしまっているのだろうか?

うーん。

またしても困惑のうなりなのである。

実はこのレコードがでた1978年、
フランク・ザッパはレコード会社ともめていて
このタイトルは当時、
ザッパの了解なしにレコード会社が勝手にリリースした、といういきさつがあった。
(…おれも詳しいな)
だからひょっとしたら、レコ-ド化の時点で
何かいい加減な作業をされてしまっている可能性もある。
そこでもう一枚、ザッパのCDを借りてきた。

◎「アポストロフィ」(1974年録音)

ところがこのCDは大惨敗。
アナログと比べるとハギレが悪く、だんごのような音。

CDにしてもレコ-ドにしても、
音の良いもの悪いものが混在していて、わけがわからなくなってきた。

が、やっと答えのようなものが見えて来た。

それはつまり、
器としての「CD」にはなんの責任もなかったということである。

マスタ-音源がア-ティストの手を離れて
CD化、レコ-ド化されるまで、
どのような人々によって、どのような作業が行なわれているのか
よくは知らないが、
どうやらそのあたりに秘密が隠されているのではなかろうか?

一人でもセンスのない技術者が紛れ込んでいたら、アウトなのかもしれん。

目には見えない音の世界のことであるのをいいことに、
テキト-な作業をやっている、ヤクザな業界なのかもしれん。

アナログレコ-ドにしても、
同じタイトルでも個体差によって、品質にはかなりバラつきがあるらしい。
初版盤にはとんでもない高値がついていることがある。
マトリクスナンバ-(レコ-ドを製造する時のスタンパ-の番号)
まで気にするコレクタ-もいる。

同タイトルのアナログ盤とCD、
初版盤から再版盤までを、ずらっと並べて聴き比べたことはないが、
将来、大金持ちにでもなって隠居したあかつきには、
そんなことをしてヒマをつぶすのもいいかもしれない。

さて、ここで最後にひとつ、
告白しなければならないことがある。

ここまでオ-ディオについて、
実に偉そうな態度でもって、遥かなる上から目線でもって、
書いてきた、わたしこと井形大作であるが、
今回のテストを始めたとき、実にオドロクべき事実に気がついてしまった。

わたしの家のレコードプレーヤーは長年にわたり、

L/Rが逆でした。

それに、約15年間、気がつかなかった。

あははは。

これがもし、レコード会社の技術者であれば
「センスがない」
と言われるどころか、即、首である。

ごめん。
                          



     

2009 9月
   「対決!アナログレコ-ド VS CD」(ロック編)